Hey-Bee!!

 

 

サレヴェイ

 

 

 

 

 ある日、サレは血まみれになって帰ってきた。

 

 

 最近は、ベッドから自由になった俺は思わずその容姿に驚いてしまった。

 ツン、とした鉄ともとれる血の匂いがサレの部屋にすぐさま充満する。

 「サレ・・・・・・・・?」

 彼が血まみれで帰宅するのは、珍しい事ではない。

 珍しくはないが、今回は珍しかった。

 

 いつもなら、全身に血を浴びて笑みを絶やさず悦に浸っているようなサレの顔が今日は青白い。

 足元もフラフラしている、その覚束無い足からは鮮血が零れて絨毯に染みを作る。

 自分の血なのかもしれない。

 

 しかし、血に染まるサレは何度見ても赤が似合うと思う。

 サレの白い肌に血の赤がとても映える。綺麗だと思う。

 

 「ヴェイグ」

 「大丈夫か・・・?」

 今にも掠れて消えていきそうなサレの声。

 今にも倒れてしまいそうなサレに、俺は手を伸ばした。

 人に干渉されるのを嫌うサレのことだから、振り払われるのを覚悟したが、すんなりとサレを掴む事ができた。

 そして、サレは同時にガクンと崩れた。

 

 

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 ヴェイグの手を振り払う気力がなかったわけじゃない。

 払うことはいつでもできる。払おうと思えば僕はできた。

 できたけれど、しなかった。

 

 ヴェイグの顔を見たら――――どうしてか、ホッと落ち着いたから。

 

 

 「ひどい怪我、・・・・・・どうした?」

 「どうだっていいじゃないか」

 理由は無駄だ。

 結論があれば、それでいい。

 僕はひどい怪我を負った、それだけだ。

 勝った? こんな怪我を負って何に勝ったと?

 負けた? こんな怪我を負ったけど死にきれず白旗を振ったと?

 理由があれば、僕は惨めになる。

 だから、理由はいらない。結論があればそれで十分だ。

 

 言葉はいらない。 けど、どうしてだろう?

 今は、理由がほしい。

 「何故、ここにいるんだい・・・?」

 弱っている僕を今、倒す事が出来る。

 立つ事すらままならない僕を放って逃げ出す事だってできるはずだ。

 「僕が嫌いなんだろ?憎いんだろ?だったら――――――」

 「・・・・・・・・・・・・」

 

 するどいヴェイグの視線が僕に突き刺さった。

 

 

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 「俺がそういうことをすると思っていたのか?」

 思っていられたのなら、心外だ。

 

 今までにサレを殺すチャンスならいくらでもあった。

 逃げるチャンスならもっとある。

 隣で無防備に眠っているサレの心臓をフォルスで貫いてやる事だっていつだってできた。

 

 けど、俺はしない。

 サレだって解っているはずだ、自分みたいな真似はしないと。

 もし、俺がそんなことをするのであれば、俺はすぐに殺されていたはずだ。

 

 「俺はお前を許さない」

 「けど、手当てしているキミは何かな・・・・?」

 「俺は、俺がしたいようにしているだけだ。 他意はない」

 「ふぅん。いいのかなぁ・・・・・・・・・もっと酷いことをするかもよ?」

 サレの無理矢理に作る力ない笑みで、そんなことを言われてもいまいち説得力にかけるかもしれない。

 

 サレに似合っていた赤を白いタオルで拭いながら、忠告した。

 「無理はするな」

 「・・・・・キミこそ」

 

 

 

 

――あとがき――

1つの場面を交互の視点で進めていく書き方は、結構好きです。

それぞれの心理描写を書くのがとっても楽しいです。

 

そんなこの作品は、今まで平行線だった気持ちがちょこっとだけ傾いた感じ。

進展、っぽいのが表れていれば大成功。

どーですかね?

 

2005.02.05.

 

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