Hey-Bee!!

 

 一応、ヴェイグがサレに連れて行かれた方の続編です。

 未読でしたら、読んでくださいね。

 

 

 

 

サレ×ヴェイグ←ミルハウスト

 

 

 

 城内は騒がしくなった。

 「ミルハウスト将軍、お帰りなさいませ!」

 「遠征、お疲れ様です」

 城門を見張っている兵士が頭を深く下げながら挨拶すると、ミルハウストは「うむ」と短く答えて、門を潜った。

 城に入ると、ズラリと城に残っている兵士が並び、正規軍将軍ミルハウストの遠征からの帰還に喜んだ。

 「よし、ここまでご苦労だった。各自解散!」

 ミルハウストが解散を許すと、「ハッ!」と敬礼のポーズをして一緒に帰還した軍の兵士らは散った。

 もちろん、ヒューマとガジュマ別々に。

 

 「あ、君。私がいない間、城で何か変わったことはないか?」

 ヒューマやガジュマとか差別していることを馬鹿げていると思っているミルハウストだからこそ、敢えてガジュマの城に残っていた兵士に尋ねた。

 ヒューマに関わるのは本当は嫌だが、上官として答えなければいけないガジュマ兵は渋々と答えた。

 「いえ、特に―――――――・・・・・、ぁ!」

 「どうした?」

 「・・・・・・、あまり将軍には直接関係ないかもしれませんが?」

 「構わない」

 少し戸惑いながら、ガジュマ兵は隣にいた兵士をチラリと見て意を決したように恐る恐る声を潜めて言った。

 「最近、王の盾の四星であられるサレ様が留守だというのに、サレ様のお部屋から人の気配がするんです」

 「サレが・・・・・?」

 サレの名前を聞いて、ミルハウストの眉間が険しくなる。

 サレとミルハウストは王の盾と正規軍と違う部隊であるからか、よく衝突が絶えない。

 どちらかといえば、軍会議などでミルハウストの提案をサレが横から愚痴をつけるという感じなのだが。

 「部屋に誰かいるのか・・・・・・? そういう話は聞いた事はないが、いつ頃からだ?」

 「そうですね、1週間程度かと」

 「今、サレはどうしている?」

 「3日前にキョグエンへと向かったばかりです」

 「キョグエン・・・、ちょっと行ってすぐ帰ってくる距離じゃないな・・・。調べるのなら、今しかないだろう」

 ミルハウストの発言に周りの兵士たちが驚きざわつく。

 「そんな!ただいま、遠征から帰ってきたばかりじゃないですか!少しは休まれた方が!」

 「サレの行動にはいささか不可解なところがある。早めに対処をしておきたい」

 「将軍!」

 「これは、私の独断だ。君達がついてくる必要はない」

 止める兵士に兜と鎧、手荷物を預けて四星の部屋がある塔を目指した。

 王の盾の本拠地である塔は正規軍とは対となる場所に立てられ、正規軍が東の太陽の光があたる方で、王の盾はその陰に隠れる場所に立てられている。

 塔の階段は螺旋階段となっていて、上るためには数度くるくると回っていかなければならない。

 最上階とその下3つが四星の部屋となっていて、1人につき1階という広いスペースが与えられている。

 塔の最上階、反対側の正規軍の塔でミルハウストと同じ作りの部屋。そこがサレの部屋となっている。

 王の盾の見張りが厳重にも3人、サレの部屋への扉を固めている。

 

 「そこを退いてもらいたい」

 「いくら、正規軍の将軍様でもソイツはちょっと聞けねえな」

 口の悪い、嫌な笑みを浮かべた王の盾の見張りがミルハウストに突っかかった。

 「私の命令が聞けないのか」

 「聞けないな、俺たちゃ正規軍とは全く関係ないしな」

 「・・・・・・・・・」

 通れない所を見ると、やはり部屋の中に何かがあるらしい。

 ここで引き下がることもできるが、それではサレの思惑通りでとても腹立たしい。

 「仕方がないな。あまり、仲間を討つのは気が引けるが」

 スラリ、と腰から下げている鞘から剣を抜くと3人を前に構えた。

 剣先が突っかかって来た見張りの喉元に向けられると、喉仏がゴクリと上下に揺れた。

 「ちょっと、不味いんじゃない?こんなコトで将軍と交えるの」

 「問題を起こすのは、嫌だなぁ」

 「でも、俺たちはサレ様からココを守るように」

 「安心したまえ、君達のことは私が黙っていよう。何なら、正規軍で雇ってやってもいい」

 ミルハウストが武器を構えながら、そう条件を立てると3人の答えは早かった。

 「お願いします!」と声を揃えて、見張りの3人はサレの部屋への道を許した。

 しかし、武器をちらつかせただけで、道を開けてしまう見張りは正規軍でもいらないのだが。

 

 扉には鍵が掛かっていなかった。

 すんなりと入れた部屋は昼間だというのに薄暗く、静かだった。

 サレの部屋は大した物もなく、必要最低限なものがあるだけだった。

 話に聞く、人の気配は今のところ何も感じられない。

 もしかしたら、サレが気まぐれに部屋に帰っているところを感付かれただけかもしれない。

 ミルハウストは一応、一つひとつ部屋を調べて見た。

 そして、最後寝室へとドアを開けると、人の気配がした。

 ベッドの上に白いシーツの塊。

 いや、シーツを被っている何か。

 ドアを開けたことによって風が入ったことにより、その塊が「ん・・・」と短い声を上げた。

 男の声だ。

 もぞり、と塊は動いてときどき鎖か何かが擦れる金属音が響いた。

 「サレか・・・?確かキョグエンに行ったんじゃ――――・・・・・・」

 「君は・・・・・・!」

 「!?」

 何かが、起き上がった。人だった。男の人。ヒューマだ。

 そしてミルハウストが知っている者。

 女王アガーテと少女クレアの間にいるべき人物。

 「ヴェイグ、どうしてここに!?」

 「・・・・・・・・・」

 ヴェイグは目を逸らした。

 “何か”がヴェイグだということに驚いているせいで、彼が置かれた状況に対して気付くのが遅くなった。

 「何だ・・・その格好は・・・・・・」

 両手は手錠のようなもので繋がれて、鎖でベッドの柱に結ばれている。

 服は着ておらず、全裸で・・・・・・身体中に赤い斑点や傷が見える。

 「―――――っ、来るな!」

 それらを隠すようにヴェイグはシーツを被った。

 来るな、と言われて「はい、そうですか」と言えるわけがない。

 ましてや、知人がこんな格好で目の前でいることが不思議だった。

 「サレに監禁、・・・・・されていたのか?」

 「来るな!」

 もう一度、制すがミルハウストに聞く耳は持たなかったようだ。

 ジリジリとベッドの方へと、逃げられないヴェイグへと歩み寄る。

 「まさか、こんな格好で再会することになるとは思わなかった」

 「・・・・・・・・・っ」

 「こんなに手に怪我をして」

 ミルハウストは、手錠で傷を負ったヴェイグの手を取り眺めた。

 サレとは違う優しく包まれた手は、温かくそれだけでヴェイグは震えた。

 「・・・・・・出てってくれ・・・・・・」

 「何故だ!? 君がここで苦しんでいるのに、私は見捨てておけというのか!」

 「頼む、出てってくれ」

 ミルハウストの顔を見ないよう、俯いているヴェイグは掠れた声でミルハウストに願った。

 そんな恐れているヴェイグに対して、居た堪れなくなったミルハウストはギュッと強く手を握り誓った。

 「わかった。今回はここで下がろう・・・ただ、私は君を助ける。それだけは覚えておいてほしい」

 女王アガーテの儀式を止めに入ってきた青年が今、こんなにもボロボロになっている姿をミルハウストは見たくはなかった。

 今すぐにでもこの手錠を外し、窓から見える自分の部屋へと連れて行きたかった。

 「・・・・・・俺は・・・・・・」

 「大丈夫、安心するんだ」

 震えているヴェイグの傷ついた肩を優しく抱き、トントンと背中を叩いてやりミルハウストはヴェイグから離れて、名残り惜しそうに部屋をあとにした。

 

 他人に見られた・・・・・・・。

 それだけで、ヴェイグは恐ろしかった。

 こんな、痕跡を身体中に残している自分をサレ以外の人に見られた。

 それがヴェイグは世界の終わりに近いほどの恐怖心を抱いた。

 

 

 「おや、将軍。僕の部屋に何か用でも?」

 「サレ!?」

 バタンと、部屋の扉を閉めると壁に寄りかかって立ち、面白そうに笑っているサレがいた。

 「キョグエンに向かったんじゃなかったのか」

 「ええ、ちょっと部屋の鍵を掛け忘れてしまったので、戻りに。本当は見張りを3人にしたんで大丈夫かと思ったんですけど、剣を突きつけられただけで逃げちゃったみたいで、今さっき始末した所なんです」

 笑顔でサレは今さっき、付いたような血痕が染みている手袋を広げて見せた。

 「・・・・・・・・・・・」

 「そうそう、将軍。僕の部屋にワザワザ入って頂いて、何か緊急の用でもあったのかなぁ?」

 「こんなことが許されると思っているのか?」

 「何のことですか?」

 とぼけた顔で、サレはしれっと答えた。

 まるで、ミルハウストを試しているかのようだ。

 「ヴェイグのことだ。あんなふうに自由を奪うなどと!」

 「ああ、可愛かったでしょう? ヴェイグは僕のモノですから、僕の好きにして当然でしょう」

 「サレ、貴様!!」

 サレの胸倉を掴んでミルハウストは壁に押さえつけた。

 しかし、鋭い剣幕のミルハウストに対して、サレは余裕の顔だった。

 「おや、僕に手を出していいんですか、将軍? 貴方は僕の部屋に無断で入ったんですよ、非があるのは将軍の方じゃないですか」

 「これが黙っていられるか!」

 「黙って頂けないのなら、将軍を殺すまでだけど?」

 ひやり、とした感触が鎧を脱いだミルハウストの隙を生んだ首筋に当てられた。

 小さな鋭いナイフだ。

 「ここを斬るとどうなるか、分かるでしょう?」

 これで、頚動脈をスッパリいったら血が噴出すのは目に見えている。

 ミルハウストは舌打ちをし、ゆっくりとサレを掴む手を降ろした。

 「くれぐれも、他言無用でお願いしますよ。 じゃないと、あのコのプライドが傷つく」

 「・・・・・・・・・。」

 「では、お仕置きがありますので」

 失礼、と小さく挨拶するとサレは素早く扉を開けて中に入り、強く扉を閉めた。

 バタン!

 ガチャリと鍵まで閉めた。厳重に3つも。

 

 「サレ!」

 「そんな不様な格好を将軍に見られたんだ?カワイソウだね、彼に慰めてもらった方が良かったかなぁ?」

 「・・・・・・・・ッ!」

 「ミルハウストにそんな格好を見せたお仕置きだ」

 「――――何故だ!?」

 

 

 そんなことで、理不尽を突きつけられているヴェイグがとても憐れに見えた。

 この扉の向こうで、あの無表情の彼がどんな顔をして、こんな声を上げているのだろうか。

 ミルハウストはただ、サレの扉の前で立ち竦み、ヴェイグの表情を思い描くしかなかった。

 

 

 

――あとがき――

3日もベッドの上にいて、トイレとかはどうしたんだろう(悩)←!!

動けないわけだから、食事も水分もとってないし・・・・・・?

・・・・・・・・・・。

そこは、深く突っ込まないことにいたしましょう☆

 

ちなみに、塔とか部屋とかは僕が考えている架空の建物です。

公式ではありませんので、ご注意。

 

2005.01.28.

 

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