パソコン
机の上に置かれたパソコンに向かってライトはキーボードをカチカチと鳴らした。
タイピングの速度と正確性は申し分ない。
カチカチと画面に文字を打ち込むライトの背後でリュークはノンビリとリンゴをしゃりしゃりと齧る。
ライトが文字を打ち込み終わってフゥ、と息を吐きパソコンの電源を落とした。
電源を落としたパソコンの画面には闇が戻り、その中にはライトの疲れている顔が鏡より劣るが映っていた。
・・・ライト、だけだった。
「リューク」
画面に映ったライトの口が静かに動いた。
「ん?どーした、ライト」
リュークは名前を呼ばれるとリンゴを全部食べ終わり指についた果汁をペロリと舐めながらライトが覗き込んでいる画面を隣から眺めた。
隣にはリュークの存在があるのに、画面にはリュークが映らない。
「・・・・・・呼んでみただけだよ」
何でもない、とライトははにかんでリュークに言った。
「さあ、これから塾だよ。もうすぐ本番だからね、大変さ」
塾へ行って勉強もしなければならない、デスノートにも名前を連ねなければならない。
警察の動きにも気を配らなければならない。
そんな疲れた顔が画面に映っていた。
「大変だな、人間は」
隣にいたリュークがそんなことを言ってきた。けれど、画面に映るはずもないリュークの表情は全くわからなかった。
「リューク」
「何だ」
「寂しくないのか?」
寂しい?
リュークは首を横に傾げて考えた。
「リュークは今、ここに存在している。だけど、それを証明する人もモノもない。今は僕がいるけど」
逆にいえば、僕しかいない。
リュークの存在を肯定するものが僕しかいない。
「俺が寂しいのはライト、お前が死ぬことだ」
ライトは初めて画面から目を離し、隣のリュークの顔を見た。
「お前が死ねば、俺はまた退屈になる。お前と一緒にいるのは楽しいからな」
こんなバケモノを可愛いと思ってしまう僕は、どうかしている。
フフッ、と小さくライトは笑って塾に行くカバンを手にとり席を立った。
「僕はまだまだ死なないよ。神になるんだからね」
ライトは言うと突っ立ったままのリュークの肩をポンと叩いた。
「そうじゃないと、俺がつまらない」
ニヤ、とリュークは口の端を釣りあがらせた。
――あとがき――
掘り起こしたもので、初期の頃に書いたモノ。
リュークが好き。
2005.01.27.
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