ヴェアニ
ミナールの宿。
アニーはテーブルに日記を広げて、ペンを走らせていた。
本当にユージーンが父を殺したのかを見極めるために、彼らについて行く事になった経緯、旅の目的などを記す。
(あの人の仲間のことなんか、どうだっていい)
彼らの旅のことなんか、自分の知った事じゃない。
日記を書きながら何度もそう思った。
けれど、彼だけはどうにも気になってしょうがない。
朦朧とした意識の中。
彼が抱き上げ、背負うときに感じた温かさ。
「・・・・・・・・・」
今まで、自分と同じ年代の人と関わった事はなかった。
カレギア城に父の仕事を見に行ったときも、大勢の大人の人が周りを囲んでた。
マオも同じくらいなのだけれど、マオとは違った彼の持っている独特な雰囲気。
それにアニーは惹かれているのかもしれない。
(どうして?今は、あの人のことだけを考えなきゃいけないのに――――)
父を殺したユージーンとようやく接触できた、というのにアニーは新しい感覚が胸をいっぱいにされるのに戸惑いを感じた。
「ヴェイグさんにはクレアさんがいるのに」
無意識のうちにそんなことを呟いていた。
そして、アニーは顔をカッと赤らめて焦った。
(まるで、私がヴェイグさんを好きみたいな・・・・・・・っ)
違う、違うと思いながらも完全に否定できない矛盾。
いつのまにか走らしていたペンの手も止まり、頭が働かなくなる。
コンコン、と控えめなノックが響く。
「ぁ、はい!」
突然な来訪者にビクッと体を強張らせながら、アニーは立ち上がりノックをされたドアを開けた。
「ヴェイグさん!」
「まだ、起きていたのか」
目を丸くして、背の高い彼を見上げた。
ヴェイグをじっくりと見ていなかったのか、アニーが思い出していたヴェイグと実際に見るその顔は少し違っていたらしい。
思い出している彼との違いを今一度、じっと見ては新たな発見をする。
まつ毛が長いとか、唇は少し薄い・・・・・だとか。
「アニー?」
じっと見つめられたままのヴェイグは眉を顰めて、アニーの顔を伺うようにして名前を呼んだ。
呼ばれると、ハッとして顔を赤くしながら手をパタパタとさせる。
「ごっ、ごめんなさい!い、今すぐ寝ますから!」
「・・・・・そうか。悪い、灯りが点いていたものだから」
「いえ・・・・・、ヴェイグさんもゆっくり休養してくださいね」
「ああ。明日は早い。一刻も早くクレアを助けにいくぞ」
「―――――――! ・・・・・・・・、わかりました」
胸にチクリとする。
胸に手を宛てて、キュッと拳を握りながら「おやすみなさい」と短く返してドアを早々に閉めた。
まだ見ぬ、クレアという人。
彼が必死に追いかけていく人。
アニーはそんな人に軽く嫉妬心を抱きながら、眠りについた。
――あとがき――
ヴェイグは、早くクレアを助け出したくって、朝一に出発しようと思っていて、
早く寝なきゃいけないのに、夜遅くまで部屋の灯りをつけて起きているアニーに寝るようにいうために来たんですよ。
僕の中のヴェアニのヴェイグはメチャクチャ、「クレア命」なんだけど、
クレアが好きかどうか以前に、大切な存在で・・・・・家族?妹?みたいな。
アニーに対しては、妹ともまた違った存在で、初めて女性を意識していると良いです(希望)
クレアは何に対しても真っ直ぐで強く頼りになるに対してアニーは弱い所をちゃんと見せて甘えてくる。
甘えられるとこれまた、ヤバイね!!っとヴェイグもアニーを意識していたら面白いと思います。
いいよなぁ、ヴェアニ・・・・・。
2005.02.17.
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