Hey-Bee!!

 

 

 

ミルハウスト→アガーテ。

 

 

死して貴方を想うこと

 

 

 

 

 貴方は覚えていてくれただろうか?

 静かに眠る貴方を見て、私は貴方との事を思い出した。

 

 

 

 

 私がカレギア軍に志願して、すぐ腕を買われてまだ10にもならない幼い貴方をお守りすることとなったあの日。

 ガジュマである幼き姫である貴方が、始めて目にするヒューマの私をどのように受け止めたのか。

 そればかりが気になります。

 

 

 けれど、嫌ではないことだけは解りました。

 早くに母上を亡くされて、父は国王で貴方に構われるだけの時間はなく。

 閉鎖的な大きな部屋の中、ポツンと残されている貴方が私の服の袖を掴んでくれた時。

 誰より私を頼ってくれた証拠です。

 なんて愛しい姫なのだろう、不謹慎にも震えている貴方を見て私は思いました。

 そして、誓ったのです。

 私が命をかけて私を頼る貴方をお守りすると。

 

 

 幼い貴方に世界の事を話したのも私が最初でしたね。

 貴方は私が話すことをとても興味深そうに聞いていたのが印象的です。

 難しい話をしても、その都度その意味をお聞きになっていました。

 「世界って本当に広いのね」

 「しかし、今話した所以外にも、まだ私も知らない行ったこと無い場所がたくさんあるんですよ」

 「本当に?」

 それを聞くと、貴方は部屋の大きな窓の向こうを見ましたね。

 窓の外は霧が深く、私の目ですらその先に何があるのか解らなかった。

 その窓の向こうに貴方は、私の話の世界を描いて「いつか、行ってみたい」と呟いたんでしょう。

 「その時は、ミルハウスト。貴方も一緒よ」

 「私も・・・ですか?」

 「ええ。わたくし一人だったら、迷子になっちゃうわ。だから案内をしてほしいの」

 「私でよければ、是非!」

 あの時の嬉しい気持ちをただ、思い返すばかりです。

 

 

 こんな事もありました。

 あれは貴方が15を過ぎたときだったか、とても皆を心配かけたこともありました。

 もちろん、私も例外なく驚きもしました。

 貴方がバルコニーから落ちたのですから。

 「アガーテ様!?」

 でも、実際には、ちゃんと出っ張っているレンガにしかりと掴まって大事には至らなかったんですけれど。

 それでもやはり、引き上げる時には怖かったものです。

 「アガーテ様、しっかりお掴まりください!」

 「あっ、ペンダントが!」

 私の腕を掴む1本の手が落としたペンダントを追いかけたとき、私の体もつられて落ちていくような気がしました。

 国王に頂いた、貴方の大切なペンダントが落ちれば取りに行きたくもなるでしょう。

 しかし、急に貴方の手を1つだけで支えなければならなくなったとき、絶対にこの手を離してはいけないと思いました。

 だって貴方は――――――。

 「ペンダントなんて、どうでもいい!!早く私の手を!」

 落ちたペンダントは、下の階の屋根に当たって方向を変え、地面に落ちカシャンと音を立てて壊れた。

 まさにそんな風にさせたくは無くて、私は無理矢理に貴方の手を引いてバルコニーへと引き摺り上げてしまいました。

 先ほどまで必死だったから、忘れていた貴方の涙が安心して流れるところを見て、また愛しく感じました。

 私は無事だった貴方を強く抱き締めました。

 「先ほどは酷い事を失礼しました。 国王陛下から頂いた大切なプレゼントだったのに」

 「・・・・・・・・・・・・・・」

 「けれど、私はそれでも良いと思いました。 だって貴方はこの国を担う人です。そんな貴方を落とすわけにはいきません!」

 「ミルハウスト」

 「本当に、・・・・・・・・無事でよかった・・・!」

 強く、強く抱き締められる私に、貴方は苦しそうにしながら耳元で「ごめんなさい」と謝った日。

 私が貴方から離れていく日でもありました。

 

 

 

 あの日を境に、貴方は女王としての勉強を始めました。

 教師役は私ではなくジルバ様。

 私はあの方に注意をされてしまったのです。

 「もう姫様にはお近づきにならないようにしていただけますか?」

 「何故です?」

 「姫様に何を入れ知恵したのか知りませんが、貴方が教えになったことは私の教えることの妨げになるのですよ。

それ以外にもっと理由が欲しいかしら?」

 「いえ・・・・・・・・」

 

 

 現れなくなった私を、貴方はとても心配にしてくださったようで嬉しかったです。

 ときどき会いに来てくれたときは、とても言葉には表せなかった。

 「ジルバったら、とてもスパルタなのよ。もう怖いくらいに」

 「それなのに、目を盗んで私のところに来たんですか?」

 「ええ、ミルハウストと一緒だととても落ち着くわ」

 にこり、と微笑む貴方の頭をくしゃりと撫でると猫のようにじゃれて来てとても可愛らしかった。

 「しかし怒られるのは、私なんですよ?」

 「ああ、そう・・・よね。ごめんなさい」

 「謝らないで下さい。私も嬉しいんですから」

 部屋へと帰っていく貴方の後姿にそう言うと、嬉しそうに走っていく姿を私はずっと見ていました。

 

 

 しばらくして、私は国王から推薦を頂き正規軍の将軍になることになりました。

 貴方を今度は近くから守って上げられると思い歓びましたが、将軍になってからは世界中あちこちに派遣することが多くなり、貴方と会う機会も少なくなり。

 ようやく会えたときは、もう国王が崩御なされた時でした。

 「お父様!!」

 悲しむ貴方の一瞬の顔を見て、すぐに私は世界中へと回らなければならなかった。

 ラドラスの落日で被害の程を見なくてはならなかったから。

 

 そして一年後、貴方が女王陛下として国を治め、ようやく落ち着いてきたかと思うと、

 今度は貴方の行動が怪しくなっていきました。

 王の盾に何を命令したのか知りませんが、こそこそとしている事はあまりよくないことだと思いました。

 問い詰めようとするもジルバの目が厳しく、何も聞けず。

 ついに貴方は、聖なる王ゲオルギアスを復活させてしまいました。

 

 

 その後はもう、後悔の日々でした。

 何故、私が貴方を守ってやれなかったのか、止められなかったのか。

 ヴェイグたちが乗り込んできたのは必然的。

 非は私たちにあるのは明らかでしたが、貴方がしたかったことができなかったのは彼らがいたからかもしれません。

 貴方を失った日。

 貴方が消えた日。

 貴方に気付けなかった自分。

 貴方の気持ちに気付けなかった自分。

 貴方の想いに答えることが出来なかった自分。

 ようやく姿を表した貴方がヒューマの体を持っていたこと。

 ヒューマの体を持ってして何がしたかったのか。

 

 

 貴方が目を瞑り、涙を零すまで気付けなかった。

 

 

 最後に見た貴方の姿はとても勇ましく、この国の女王でした。

 私よりも世界を見てきた、強い瞳が私を映す。

 世界に触れてきたその指で私の頬を掴む。

 

 「陛下っ!・・・・・・・アガーテ!!」

 

 ズルリと落ちていく貴方の手を強く、強く握った。

 愛しい、愛しいアガーテ。

 真実の言葉を紡ぎ出した微かに動いた口に、私は自分の唇を合わせた。

 

 

 もっと早く、気付いてあげればよかった・・・・・・とは言わない。

 本来なら、私が貴方と一緒に世界を旅するはずだったのに、とは悔やまない。

 貴方は、貴方の世界を見て、聞いて、触ることが出来たのだから。

 

 

 貴方が残した世界。

 貴方が残した想いを、私が受け継ぎもっと遠い未来へ。

 

 そして遠い未来、私たちが残した世界がありますように。

 遠い未来、今度は一緒に世界を旅しましょう。

 

 

 そのときも、私は命をかけて貴方を守ると約束します。

 

 

――あとがき――

なんで、また死を描いちゃうかなーっと自己嫌悪になりつつ、

ミルハウストに感情移入して涙しながらに書いたモノです。(T□T)

 

もう、ホントごめんなさい。

やっぱり、僕は死を描くのが大好きです(嫌な告白)

でも、今回は出来るだけ嫌な死ではないように気をつけました。

「血」とかそれこそ「死」だとか、あまり使わないようにしました。

リバース攻略本の製作者さんの対談でもある通り、リバースは生きる・共存とかいうのをテーマにしてあるそうで、

だから、それに結びつけるように「未来では〜」と付け足しました。

 

難しい話はもう置いといて。

ミルハウストの独白です。

ミルハウストもアガーテを好きだったんですよ。誰より愛しいと想ってたのは違いないんです。

だけど、自分はしがない兵士で相手は一国の女王。

自分なんかがつりあえるはずないと、そんな考えを持っていたのを推奨。

それで、アガーテがクレアの体を手に入れてから「ああ、自分とアガーテはヒューマとガジュマだったんだ」と気づくんです。

ミルハウスト本人はあまり人種は気にしていなかったようだったら面白いかと。

だから、アガーテがミルハウストにストレートにしていたら絶対OKできる立場だったんだけど、

ここはジルバ様がアガーテに入れ知恵して、

「ヒューマとガジュマが結婚できませんよ。するならば、姫様がヒューマにならなければ」的なことを

恋するアガーテに教えたんですよ。

 

そーんな感じを頭に描きながら、「何て切ないんだ!」と泣きながら書きました。

その様はきっと不気味だったに違いない(笑)

 

2005.02.10.

 

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