勝手に続編!
第2話
スールズは相変わらず、自然豊かな村だった。
全ての旅を終え、故郷に戻ってきたヴェイグはクレアとそのまま一緒になり、静かに暮らしている。
そして、今年6歳になる娘ナディアを授かったヴェイグは、守らなければならない存在が増えたと、以前ティトレイが村に訪れて来たときに語った。
そんな彼は、現在スールズの牛の牛乳をミナールの商人へと届ける仕事に就き、ときどき現れるバイラスから村を守っている。
そこにヴェイグが望んでいた、穏やかな毎日がそこにはあった。
家に帰れば、笑顔で迎えてくれるクレアとナディアがあればもう十分だった。
「ヴェイグー!!」
ひょうきんな声がヴェイグを呼ばなければ。
ティトレイ親子はペトナジャンカを出発してから、山脈をわざわざ通り遠回りをしてスールズを目指した。
10の子どもを一緒に連れての峠越えは無謀かに見えたが、さすがガジュマの血とティトレイの血を受け継いだ息子である。
一応気遣っていたティトレイを追い越し、ピョンピョンと崖を飛び越えたりして父親を待っていたジェンダだった。
スールズへ続く道の途中の宿で1泊してからは、ティトレイとジェンダの「どっちが早くスールズに着くか!?」という競争まで始めた。
そんなこんなでスールズにつくなり、ティトレイはヴェイグの働く牧場へと向かい、そこで干草をいじっているヴェイグを見つければ、グッと拳を握ってヴェイグに殴りかかった。
「ヴェイグー!!」
「!?」
さすがに不意を突かれたが、ヒラリとヴェイグは突っ込んでくるティトレイを紙一重に交わした。
「ぅおおおおおおおおおおおお!!!」
「親父!!」
勢い余ったティトレイはそのまま、牛のエサとなる干草の山のに突っ込んでいき、埋もれた。
あーあ・・・・・と呆れているジェンダを見て、ヴェイグはティトレイが埋まった干草の山へと近付く。
「何をしているんだ、ティトレイ」
緑のボサボサの頭をさらに干草をつけてボサボサにして、タハハと笑いながらティトレイは身を起こした。
あまり変わらない様子に、思わず笑ってしまう。
「いやぁ、久し振りの挨拶に一発殴ってやろうと思って」
「何も殴る事はないだろう」
「何を言うか!俺たちは拳の中に友情を見出したんだろ?」
「・・・・・・・・・。」
「親父、ホントそればっかだよ」
ヴェイグとジェンダは顔を見合わせて笑い、ティトレイは口を尖らせた。
「ジェンダ、あなたちょっと見ないうちに大きくなったわね?」
ヴェイグの家に行くと、クレアがご馳走してくれることになりそのまま泊まる事になった。
白いエプロンをつけたクレアは長い髪を頭の上で一纏めに結わい、顔はもう一人前の母親という感じだ。
ジェンダの母親のヒルダとはまた違う母親のイメージで、クレアには何だか甘えたくなってしまう。
「ホント?」
「ええ、角も前より大きくなったみたい」
「でしょでしょ!?」
自慢の角を褒めてもらうとジェンダはエヘへと嬉しそうに顔を緩ませて笑い、クレアが作ったクリームスープをスプーンですくった。
「ジェンダ、あんまいい気になるなよ〜?ヴェイグおじちゃんがスネちゃうからな!」
「拗ねない」
「またまた〜〜〜」
ティトレイは肘でヴェイグをグリグリと突付き、冷やかした。それにむっつりとしたヴェイグは話題を変えようとクレアに声を掛けた。
「・・・・・・。 クレア、ナディアはどうした?」
「ナディア?あの子なら、もう寝かしちゃったわ。あなたとミナールへ行ったでしょ?疲れちゃってたみたいね」
「へぇ、ナディアちゃんとミナール行ったんだ?」
「そうよ、あの子ったらすっごいお父さんっ子だから、行きたい行きたいって」
クレアは思い出したようにクスクスと笑った。
「そういえば、ヒルダさんは?」
食べ終わった食器を片付けていたクレアは、不思議そうにティトレイに訊ねた。
訊ねられれば、「あぁっ!!」と大口を開けて驚いたように思い出した。すっかり忘れていたらしい。
「ヴェイグー、ヒルダこっちに来てないかぁ!?」
「は?」
「ヒルダが旅に出ちゃったんだよぉ!!」
ティトレイの話だけでは容量が得られなかったため、代わりにジェンダが簡単に説明した。
食器が片付けられたテーブルの上にヒルダが書いた手紙を広げて、ヴェイグとクレアに見せて、「雪を見せてあげる」という一言も付け加えた。
「雪=氷、で俺のところに来たわけか・・・・・」
ティトレイの考えにやれやれと頭を抱えながらヴェイグは溜め息を吐いた。
「おかしいのか?? まぁ、スールズも雪が降る地域だからこっちかなーとか思ったわけだ」
「今は夏で、雪はもう溶けている」
「そうよね。私もペトナジャンカからスールズに行くだけに「旅に出る」なんて言葉を使わないと思うわ」
「い、言われてみれば・・・・・・・・・」
「雪を見せてあげる・・・、ノルゼンの方じゃないかしら?あそこはスールズと違って夏でも雪が積もっているはずよ」
クレアは本棚から世界地図を取り出すと、今度はテーブルの上にそれを広げてノルゼン方面を指差した。
そこは、スールズよりも北に位置し、クレアの語る通り冬が長く夏でもそんなに気温は上がらないため、降り積もった雪も年中残っているのがノルゼン地方の特徴だと言える。
「近くにヒルダの親が住んでいたモクラド村もある、行ってみる価値があると思う」
「あー、もう!何で気付かなかったかなぁ、俺は!やっぱ持つべきものは親友だよな!」
「全くだ」
やれやれと肩を竦めたヴェイグだった。
――あとがき――
あんまりにも、長くなったのでココで3話に続きます。
ナディアと○○(笑)は次の話にちょこっと出てきます。
ちょこっとだけです(笑)
2005.02.03.
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