TOR 勝手に続編!!(笑)
ユリスの恐怖が消滅してから10年の時が過ぎた。
世界には強い心を持ったヒトがいる。
ガジュマとヒューマ、今はそれを差別する者はいなくなった訳ではないが、少なくなった。
力を合わそうとする者がいれば、世界は変えられる。
世界を救おうと働いた若者の中に交じっていた占い師が笑顔に笑いそう言った。
ラドラス王、アガーテ女王が亡くなってから10年。
カレギアを指揮するものはヒューマの正規軍ミルハウスト将軍ただ1人。
あの日、世界を救った英雄たちは自然と伝説となり、そのまま噂となる。
一個人として祭られるのを嫌った彼らだったからだ。
ペトナジャンカ。
大きな製鉄工場がある工業都市は10年前は知識の主張であるヒューマが多くいた街だった。
しかし現在は多くのガジュマと力を合わせ、更なる技術発展の道を進んでいる。
ここで作られた武具はこの街から世界へと大きな交流の場となっている。
働く人々は笑顔だ。
ガジュマもヒューマも関係ない。
1人の働くヒトとしているのも、ここに有名な英雄が2人も住んでいるからだ。
種族を超えて住んでいる2人を見ると、どうにも温かい気持ちになる。
ガジュマだとかヒューマだとか、そんなことで争う必要はない。どちらも1人のヒトなのだから。
そして、世界観は変わる。
ヒトから生まれるのも、またヒトなのである。
ヒューマの身体を持ち、ガジュマの身体を併せ持つヒト。
ガジュマとヒューマのハーフであるのも、またヒトなのだ。
英雄だから?そんなことは関係なかった。
「親父!」
大きな煙突がそびえ立つ製鉄工場に幼い声が響いた。
器機の騒音に掻き消されそうな少年の声は、耳あてを当てている父の耳には届かなかった。
父はハシゴの上で動かなくなったベルトコンベアの装置を修理していた。その場所は狭く、大人1人しか行けないため他の作業員たちはいない。
もし誰かいれば気付いてもらえるだろうが、耳がお休み中の彼には息子が呼んでいることすら気付かない。
さらにあろうことか、鼻歌(マオ作・ティトレイの歌)を歌っている始末だ。
息子にとっては何度耳に届いたであろう歌か、うっとうしいとさえ感じ始めている。
「おーやーじーってばよお!」
何度の呼びかけにも動じない父に対してそろそろ息子の方は限界である。
うりゅぅ〜と瞳に涙が溜まり始めてきている。大泣き5秒前かもしれない。
「あら、ジェンダどうしたの?」
顔を赤くして泣きべそをかいている子を見つけた女性が慌てて駆け寄った。
「セレーナおばさん・・・っ、親父が」
「お父さんに用があるのね? まったくあの子は・・・」
甥の頭を優しく撫でて、セレーナは少年に持っていた書類を預けた。
「ティトレイ!!」
「うぉ!?」
少年よりも大きな声を上げるセレーナに少年も少年の父もビクリと身を縮めた。
父が驚いた拍子にスパナをガツン、と自分の足に落として「痛って〜〜!」と悶えるのが見える。
「んもう、自業自得ね。 こんな小さい子ほったらかしにするんだから!」
「あ、姉貴・・・いきなり大声上げんなよ・・・って、ジェンダ?どうしたんだよ」
ようやく自分の息子に気付いたティトレイはハシゴから飛び降りて、泣きべそをかいているジェンダを覗きみた。
「ママが、ウチを出てっちゃった!」
「へ?」
息子の拗ねるような口ぶりに思わず尋ね返した。
だか息子ジェンダが突きつけた手紙には、見間違うはずもない達筆で綺麗な文字が一行。
『 旅に出るわ。 ヒルダ 』
「な、何ぃぃぃぃぃぃ!!!!!????」
ティトレイの絶叫が製鉄工場を揺るがす。
あの仲が良かった英雄の夫婦が離婚したなどという噂は一夜にして街中に広まった。
ジェンダ・クロウは父のティトレイ・クロウと母ヒルダ・ランブリングを持つ英雄夫婦の子供である。
ヒルダはヒューマとガジュマのハーフであり、ティトレイは頭は足りないがヒューマである。
ジェンダはいわゆるガジュマとヒューマのクォーターである。
容姿の大半はヒューマと同じであるが尻尾と角、毛に覆われた耳はガジュマのものである。
やはりクォーターと言うだけあって、角や尻尾は小振りである。だが、それが幼さ故かもしれない、これから成長することだってある。
髪は父と同じ緑色、フワフワとしたウェーブがかった短髪である。
顔つきはどちらかと言えば母に似ているかもしれない。妖美さがあるような気がする。
だが性格は活発で、やんちゃな所もある。
ティトレイは息子に格闘技をいくつか教えているが、当の本人は道術に興味があるらしく分厚い本を眺めている。
そして、今日もティトレイが作った木製のテーブルの上で大きな本を広げてジェンダは道術の勉強をしている。
ただ、勉強に実が入らない。
理由は、後ろのベッドで体育座りをしてイジけている父にあるのだが。
「ヒルダー・・・なんで出てっちゃったんだよー・・・。帰ってきてくれー・・・」
あのようにベッドの上でヒルダの置手紙に向かって声をかけている父は何とも痛いことか。
「あーもう、親父!!いい加減にしよーよ、そんなジメジメしてたらジメ虫が出てくるぞ!」
「ジメ虫って何だよ!(ツッコミ) だってなぁ、お前・・・母さんいなくて寂しくないのか?」
「んー・・・・・・・・別に?」
「質問に質問で返すのは感心しないぞー」
ジェンダはフゥ、と大人びて溜め息をつきながら本を閉じた。
「だって、ママから言われてんもん」
「何だって?」
「『パパは馬鹿だから、もしかしたら追いかけてくるかもしれない。もしそうなったら、ジェンダも来るのよ』って」
たどたどしいジェンダの口からは、ちゃんとヒルダが伝えたらしい言葉が出てきた。
「ほ、他には!?母さん何か言ってなかったか?」
「他に?そーいえば、今度母さん雪を見せてくれるって」
「雪・・・・・・・・、わかったぞ母さんの居場所!」
さっきまでウジウジしていたとは思えない張り切った声でティトレイは立ち上がった。
「雪、つまり氷。氷といったらアイツんとこしかねえべ!」
「アイツ?」
「そうだ、アイツだ!よし、ちょっと遅れちまったがジェンダ、母さんを追いかけるぞ!準備しろよ!
目指す場所は1つ!スールズだ!」
久方ぶりの旅となって、ティトレイは張り切ってリュックに食料、着替えなどの旅支度をした。
そんな楽しそうな父を見ていると「違うと思う」とは言えず、それでも嬉しくなるのはやっぱり、彼の子供だからかもしれない。
ジェンダは父のリュックにそっと母ヒルダの本を入れた。
――あとがき――
僕の妄想から始まりました、勝手に続編。
ティトレイの息子はどんなもんでしょう?
とりあえず、ラスボスまで考えてあるのでご要望があれば、2話や3話と書いていこうかと。
是非感想聞かせてくださいませ。
2005.01.23.
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